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0.バッドエンド
――空が、血に濡れています。
「おれはレイ。キライなモノは雨」
紅い紅い夕照にまみれながら、青年がつぶやきました。
「スキなモノは――」
「もうやめてッ!」
ほぼ悲鳴の拒否を受けて、スッと閉じられる薄い唇。
でもそれも、ひとときのこと。
「アナタが訊いたんです。おれは誰なのかと。アナタは、それを知っているのに」
無機質な声音が、温度を持ちます。絶対零度という、温度を。
鮮烈な夕焼けを背に、青年が1歩。
「やだっ……来ないでッ!」
2歩、3歩、4歩。
青年の夜色をした猫っ毛が、なびきます。
青年が歩むたび、嫌な汗がこめかみをつたい、視界がにじみます。
「おねがい、来な……っ」
水分という水分を出しつくしたわたしの喉は、乾ききっていました。
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