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4.解をあげよう
ざ、ぶん。
時は水無月の夕暮れ。
真空の流体世界は、形のない冷たい手足で、わたしを絡めとろうとするようでした。
「……ぷ、はぁっ! けほっ、けほっ……」
「いきなりごめんね! 消毒したくって」
「あっ……」
浮上したそばから、否応なくプールサイドに引き上げられ、まぶしい笑みとご対面です。
(どうして……わたしなの?)
美人なわけでも、頭がいいわけでもなく。
こんなにドジで、小心者で、冴えないわたしのなにが、この子を突き動かしていると言うのですか。
「やばいね三葉……ブラウスが透けて……えっろいわ」
せき込むわたしをさすっていた手が、ツ……と背骨の溝をなぞります。
「やだっ、さわらないでッ!!」
「暴れんなよ。痛くされたくないだろ?」
……カチリ、カチリ。
体温が、急降下しました。
血に濡れたカッターを見せつけられては、当然でしょう。
「そう……大人しくしてて。大丈夫、気持ちいいことしかしないから……ね?」
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