貧相な仔猫

　どうして犬ではなく猫にしたのかというと、小さい頃、近所に住む祖父母の家に居た、白黒猫のことを思い出したからだ。もともと、猫の方が好きだった。
　ペットショップで出会ったラグドールの仔猫は、パッとしない薄ぼんやりした色をしていて、抱っこすると小刻みにプルプル震えた。大丈夫かよと思わなくもなかったが、両親が猛烈にプッシュしていたし、判断力も落ちていた。出会った日の前日に入荷したばかりという、縁も少しだけ感じた。
　薄ぼんやりした猫は、灰色なのでグレースという名前になった。
　家に着いてキャリーを開けた途端、グレースはリビングを走り回った。ものすごい勢いで走っていた。最初は、疲れてすぐ眠るだろうと思っていたが、グレースは午前中から夜までずっと走っていて、じっとしている時間はトイレの時ぐらいしかなかった。
　いつまでも寝ないので、私は自分が寝る時間になってから、グレースを捕まえて、自分の枕の横に置いた。きっと逃げてまた走り回るだろうと思ってダメ元だったが、グレースは逃げなかった。どころか、私が布団に入って撫でると、すぐに眠ってしまった。