貧相な仔猫

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貧相な仔猫

 ペットショップで十三万円の猫を買った。  灰色の青い目をした貧相な仔猫で、種類はラグドール。私は全くこの仔猫に期待していなかった。両親が「この子はいいと思う」と言うので選んだ。本当はノルウェージャンフォレストキャットが欲しかった。  どうしてラグドールにしたのかというと、選ぶ筈だったノルウェージャンは風邪を引いてしまい、いつ家に来るのかわからなかったからだ。その時の私は一刻も早く、毛皮に包まれた暖かくて息をしている生き物が欲しかった。病弱な子は駄目だ、とも思った。  当時、四年ほど前の私は新卒で入った会社を辞めた。会社を揉めて弁護士を頼り、それと同時に、八年間共に暮らした犬が、末期がんになった。無職になったが故に犬を看病して看取ることはできたが、精神的なダメージは大きかった。  塞ぎ込むようになり、失業保険が出るのをいい事に、ひきこもりになった。  私は自分で自分を救えない段階にまでなっていた。  これではいけないと思い、会社から毟り取った退職金を握りしめて、ペットショップに行った。そんな飼い主に選ばれてしまった猫は不幸だろうが、他に手段を思いつかなかった。     
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