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ひたすら僕のことを溺愛してくるのと、少し思い込みの激しい性格には困っているが、基本的に優しいので僕は顕彰さんをとても気に入っている。
「食事に致しましょう。本日はトーストとヨーグルト、サラダでございます」
顕彰さんは僕を抱き上げてダイニングの椅子に座らせると、せっせと朝食を作り始めた。こんがり焼いたトーストにバターを丁寧に塗り、蜂蜜を入れたヨーグルトをぐるぐると掻き混ぜる。ふんふんと荒い鼻息にしか聞こえない鼻歌を歌いながら、トマトとレタスのサラダにはよく振ったドレッシングを掛けてくれた。
「ねぇ、時間がないよ。捧と話せる?」
「いけません。捧様は真広様を働かせすぎです。危ない目にも遭わせて……私めは心配でなりません。今日は私めとゆっくりお過ごし下さい」
「そういうわけには……」
顕彰さんは頑なだった。たまにしか外に出られないこともあり、僕と過ごせるのが嬉しいのだ。それは見ていたら分かる。体温は四十度以上あるんじゃないかというぐらい熱く、瞳孔は開き気味で息も荒い。今も目を輝かせながら小さく千切ったトーストを口へ運んでくれている。
「ああ、お可愛らしい。なんという愛らしい仕草でパンをお食べになるのでしょう。私めは幸せでなりません」
この世の天国です、と囁いて僕の口元を優しく拭ってくれる。もう片方の手には滑らかになるまで混ぜたヨーグルトが待ち構えていた。
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