【1】交代する人格

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「あいつは紳士のふりしてとんでもねぇ変態だからな。変なこと、されなかったか?」 「別に……特別変なことは……されてないけど」 「ホントか?」  捧は言葉を濁らせた僕に詰め寄った。後ろ向きに抱き締められて動けない体を、熱い指先が探ってくる。下着の中に手を入れられそうになり、身を捩って抵抗した。 「なんだよ。俺に言えないようなことをしてるのか?」 「違う。してない。してないけど……」  優しい、けれど執拗な手はスウェットの中を確かめるように動いた。 「抱きたい」  低く甘い声で囁かれて心臓が跳ね上がる。 「でも……」  昨日はたまたま入れ代わった新明さんに捕まって朝まで抱かれた。新明さんは一度始めるとなかなか終わらないタイプで、二度目にイッた時は、カーテンの隙間から見える空が白み始めていた。今も腰が痛い。下半身が倍ぐらいに伸びたんじゃないかというぐらい重い。 「なんだよ、俺じゃ嫌なのか」 「そうじゃないけど、時間がないし……僕の中ではみんな同じだから……」 「そうか。じゃあいい」  捧は僕を抱き締めていた腕を離すと、拗ねたように背を向けた。横になった背中がピクピクと痙攣している。 「捧? 怒ったの? ねぇ、捧ってば」  肩に手を掛けて揺すると、捧は背中を一瞬ビクッとさせた後、ゆっくりと寝返りを打った。
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