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僕の恋人、居在家捧には八人の人格が存在する。捧は基本人格で、本人を除いた交代人格として男性四人と女性三人が共存している。初めは悪い冗談じゃないかと思ったが、捧は解離性同一性障害――現在はDIDと呼ばれている症状を心的な疾患として抱えている。冗談ではない。誰かをからかったり、騙したり、演じたりしているわけでもない。僕にとっても捧にとってもこれが嘘みたいな現実だった。
三十二歳になった今は、特に病院でカウンセリングを受けたり、人格の統合を進めたりはしていない。僕自身も捧とその中にいる七人の人格を平等に愛し、捧自身もその状態に慣れている。非常にバランスが取れたいい状態なのだ。ここまで来るにはそれなりの紆余曲折があったけれど、今は全人格が僕の存在を認め、受け入れてくれている。ただ、全く問題がないわけではなかった。
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