939人が本棚に入れています
本棚に追加
交代人格の男性全員が僕に好意を寄せてくれている。その四名のうち二名と肉体関係があった。年齢不詳だが、多分四十歳前後の新明さんと十八歳のハルくん、その二人から僕はがっつり性欲込みで愛されている。残りの二名は顕彰さんと十歳ののぶながくんで、顕彰さんとは精神的な愛情で繋がっていた。のぶながくんは表に出てこない人格だった。
捧は基本人格のため、他の交代人格が表に出ている時の記憶がない。その記憶は僕から聞いたり、他の人格とノートやデータなどのやり取りをして補完している。恋愛部分のやり取りは、それぞれの性格や各人格から生まれる嫉妬で、情報が確かなものとは限らない。僕は真実を知っているが、ライバル視している人格同士はお互いを勘ぐったり牽制したりしながら、なんとかバランスを保っている状態だ。
そこに加え、恋愛感情のない女性の人格が間に入ると、日常生活が滅茶苦茶になる。僕と捧は五年以上、こんな生活を続けていた。十八歳で知り合った僕も今年で二十三歳になる。複数の人格から愛されるという異常な状況にほんの少しだけ慣れた。
「はぁっ……」
無意識のうちに溜息が出る。朝まで新明さんに愛された腰がまた鈍く痛んだ。新明さんは交代人格のリーダーで、それぞれの時間配分や細かい調整を行っている。人格同士が揉めないでいられるのも、お互いの存在を消し合ったり、新しい人格が生まれたりしないのも、新明さんの采配のおかげだ。けれどそれを利用して、時々、夜にひっそりと現れては、僕を苛めたり泣かせたりするのが好きだから対処に困る。
最初のコメントを投稿しよう!