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昨日も捧に言えないようなことを色々とされてしまった。丁寧な言葉で話し、上品で頭のいい人だけれどやたらとSっ気があり、事に及ぶとそれを如何なく発揮してくるのが怖い。抱くのは上手だったが、時間が長く、僕が泣き出すまでやめてくれないので、翌日が仕事の時はほとほと困っていた。
今、僕を膝の上に乗せているのは顕彰さんで、いつもケンショーさんと呼んでいる。顕彰さんは雷神だった。冗談だと思うかもしれないが、本人がそう言うのだから間違いない。DIDの交代人格の中には猫やキツネといった動物や、人魚や勇者といった架空の人物まで様々なキャラクターを持った人格が存在するらしい。決して珍しいケースではないようで、捧の中にもそんな一風変わった人格が存在し、それが自称雷神の顕彰さんだった。もちろん年齢は不詳だ。
風神雷神図と言えば俵屋宗達や尾形光琳の屏風画が有名だが、あれなのかと問うと顕彰さんは違うと答えた。仰々しくそのモチーフになった神そのものだと呟いて、僕はしばらくの間、開いた口が塞がらなかった。深く考えても仕方がない。本人がそうと言うならそうなのだろう。人間が畏怖してきた天然現象を神格化したものが風神雷神なら、ここにいる顕彰さんは天然現象そのものだ。だから僕はちゃんと崇めている。玩具の小太鼓を数個繋げて与えたら、涙を流して喜んでおかしなダンスを踊ってくれた。どうやら彼なりの――神の世界では最高レベルの求愛ダンスらしい。
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