確変汚染前夜 狼と小娘

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確変汚染前夜 狼と小娘

 ■ 狼とお兄ちゃんラヴっ娘と  つん、と樹木特有の甘酸っぱい香りが満ちている。木洩れ日がじりじりと背中を焼く。アカシアはたまらず、上着を脱いだ。膨らみかけた胸をやや大きめのスポーツブラが覆っている。いくら妹とはいえ、大胆すぎる。キンスキーは目のやり場に困りながらたしなめた。 「そんな格好をすると狼に喰われちまうぞ」 「男は狼だって言いたいの? お兄ちゃんが? まっさかぁ」  絶食系を二度洗いして、さらに漂白した様な風体のキンスキーが言うと、ギャグにしかならない。その時だった。彼は痙攣を起こして地面に倒れこんだ。惑星ガレンの医学は、キンスキーの様な虚弱児にも日常生活に支障をきたさないレベルの健康を保障してくれるはずだった。いや、これは発作の類ではない。彼の身体を一番よく知っているアカシアにははっきり判った。筋肉が急速に盛り上がり、産毛が剛毛と化す初期症状など、聞いたことが無い。     
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