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朝方。
私は寒さで目が覚める。
身震いしながら、シャワーを借りようかこのまま着物を着て帰ろうか悩んでいた。
優柔不断。
だがいきなり、寝室のドアが開く。
私は思わず毛布をかぶり直して、寝たふりを続けた。
そっと近づく彼の気配に、私は息を潜めた。いや、逆にスースー寝てなければ不自然だろう。だがそうできずに堪え忍んでいた。
するとそっと手が毛布をめくって顔をあらわにする。
まだバレていないだろうか。
そして私の体に触れたところで私は驚いて声を上げた。
そして彼は分かっていたように何も言わずに私を抱え、ちょっとだけ無理をしながら寝室へと進む。
「え、」
ちょっと。
「なに...」
「体冷えてる。このまま一緒にシャワー浴びるのと、ベッドで大人しく寝るのとどっちがいい?」
「どっちもいや...」
「ずいぶんな嫌われようだな」
「当たり前でしょ、フラれたんだから」
「わかってるよ」
そう言いながらも笑っている彼にこれ以上何も言えなくて、そうこうしているとベッドの上に座らされていた。
彼は部屋を出ようとしていた。
止めたのは私の手だ。
部屋着の裾を引っ張る。
元カノを連れ込んだらどうなるか、分かっていただろうに。
裾をつかむ私の手を取り、こちらの表情を窺うように屈む。
後頭部にすべるように手が回り、引き寄せられて、キスをした。
お願い、戻りたい。
ここに戻りたい。
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