5月の水辺

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涙混じりのキスが私の胸を締め付ける。 痛い。 ジンと痛い。 彼は両手で私の頬を包み、キスを繰り返した。ついばまれ、深くなっていく。 彼の胸元に手をやり、服を握りしめた。 長くそうしていたけれど、ゆっくりと彼は離れる。私の両肩をつかみ、胸元から手を離させるためか、肩を押した。私は恐る恐るその通りにした。 抱かれたい。けれど余計に辛くなる。 彼がこれ以上求めて来ないならば、私も流されることも求めることもない。 自分からは、求められない。 「好きだったの。こんな風になるくらい」 ただそれだけは伝えたかった。好きだと、あの頃言えなかった言葉だけでも。 「...俺もだよ」 彼はスッと立ち、背を向けた。 私のどこがだめだった? まだこうやって気遣ってくれるのに、なぜだめだったの。 「なん、で...」 嗚咽のように小さく漏れた声は、上手く言葉にならなかった。 寝室を出た彼は、どうやら外に出掛けたようだった。玄関の音がして、たぶん、私が身支度しやすいようにしてくれたのだろう。 その行為に甘えるように、私はシャワーを借り、着物を着た。 化粧品は持ってきていないので、すっぴんで帰るしかなかった。前髪を掻き寄せて眉毛を隠す。 そして、部屋を出るために、部屋のカギを探し始めた頃に彼は戻ってきた。なんというタイミング。見計らったとしても鋭すぎる。 いや、どういうつもりだったのか真実はわからないけれど。 「駅前で朝食でもどうかな」 もうこれが最後なのだろう。 私はつい寂しくて、こくりと頷いた。
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