5月の水辺

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少女漫画の主人公って、まあまあの確率で、フラれる時に相手から理由を言われることが多い。 『つまらない』 『仕事と俺とどっちが大事なんだよ』 『一緒に住んでたら息がつまる』 『魅力感じない』 しかも二股がばれてやけくそに言い放つダメ男っぷり。そこからまあ話は始まるわけだ。 でもね、彼はそんな人ではなかった。 理由を言われずにフラれたわけだ。 自然と離れていった心に、私はなす統べもなかった。 大きなビルにたどり着き、一階の花屋さんに黙って二人で入る。 「せっかくだし連名で贈ろうか。その方が立派でいいだろ」 「それは...」 贈られる相手が気まずいのでは? と思った。でも、断るのもなんだか意識しているように思われて悔しい。 「チューリップを贈りたいんです」 ―――白の。 「ああ、きれいだね。―――すみません」 店員に、予算と希望を伝えると、他にも二組の花束を作らなければいけないから、出来上がるのは30分後ということだった。人手はあるのだろう。思ったりも早かったので、開演前に待合室に顔を出すには十分だった。 「それまでどこかで腹ごしらえでもしようか」 と彼がそう言って、すぐに私を見つめた。正確には私の服装だ。 「どこがいい?」 「そんなに気にしないでください。慣れてますので、どこでも構いません」
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