1/1
前へ
/96ページ
次へ

 空には夕闇が燃え上がるように揺らめいている。  東と西の狭間には青い闇と混じり合うオレンジが見える。  その真ん中を、ザワザワと冷気を混じらせた北東の風が吹いている。  境内の木々が囁き合うように揺れる中心に……、  その桜は……、  不知火桜は真っ黒な花を咲かせていた。  風に舞いながら……、  黒い花びらがオレンジ色の空を掛け抜けていく。  それはまるで誰かの罪を咎めんとする流星のようにも見えた。
/96ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加