2、山田水無瀬の事件簿

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「ちょっと訊いても良いかな?」  開いた扉の前。  苦笑いの終わった漣也さんの顔は酷く真剣でした。 「何でしょうか?」  左藤君が応じました。 「まぁ、鴉谷教授が芥川(あくたがわ)準教授に相談にのってもらいたいと思ってここに来たんだけど、……さっき、部屋を尋ねたら二人共部屋に居なかったみたいで、……その、どこに行けは会えるかな?」  漣也さんが言います。  それに左藤君はすまなそうに顔を歪めました。 「ああ。すみません。今日は二人共、終日留守みたいなんですよね」  左藤君が答えると、 「……そうなんだ……」 と、漣也さんはとてもガッカリした様子でした。  ここで説明しておきましょう。  鴉谷教授とは言うまでもなく、この研究室のトップであり、霊子の発見者でもある霊子力学の権威、鴉谷ケルディウム3世教授のことです。  研究者というよりは探究者。 金剛仁王像のような肉体の、猪突猛進型の性格の人です。 三日前に「ちょっと研究のために、野良のライオンと戦ってみたくなったのである」と言って研究室を出たっきり、姿を見ていません。  そして芥川準教授とは、芥川(あくたがわ)(あばら)というこの研究室の女性研究者です。     
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