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「ちょっと訊いても良いかな?」
開いた扉の前。
苦笑いの終わった漣也さんの顔は酷く真剣でした。
「何でしょうか?」
左藤君が応じました。
「まぁ、鴉谷教授が芥川準教授に相談にのってもらいたいと思ってここに来たんだけど、……さっき、部屋を尋ねたら二人共部屋に居なかったみたいで、……その、どこに行けは会えるかな?」
漣也さんが言います。
それに左藤君はすまなそうに顔を歪めました。
「ああ。すみません。今日は二人共、終日留守みたいなんですよね」
左藤君が答えると、
「……そうなんだ……」
と、漣也さんはとてもガッカリした様子でした。
ここで説明しておきましょう。
鴉谷教授とは言うまでもなく、この研究室のトップであり、霊子の発見者でもある霊子力学の権威、鴉谷ケルディウム3世教授のことです。
研究者というよりは探究者。
金剛仁王像のような肉体の、猪突猛進型の性格の人です。
三日前に「ちょっと研究のために、野良のライオンと戦ってみたくなったのである」と言って研究室を出たっきり、姿を見ていません。
そして芥川準教授とは、芥川湶というこの研究室の女性研究者です。
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