〈11月20日 月 08:16〉

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 これは何かの夢なのだ。私はそう直感した。  そこはひどく寂れた映画館のようで、目の前には大きなスクリーンがある。その脇にある黒いカーテンは破れかけており、下の方からは後ろの壁が少し見えていた。座っている座席は少し動く度にキィキィという可哀想な音をたてる。肘掛けもべたついていて、何もなければすぐにここから出ようとするような劣悪な環境だった。  それでも、その部屋から出なかったのは、酷く疲れていたからだった。疲れていて何もしたくないのだ。なぜ疲れているのか。その理由を思い出そうとしたが、それは出来なかった。  ここが夢だ、と思ったのは、現実世界の映画館のような賑やかさが無いからだった。見る限り、人は座っている私と後ろの方で座っている男が1人の、2人しか確認できない。ちなみに私は前から3番目の列中央に座っており、スクリーンが見やすい位置だった。  男、といっても本当にそうかは分からなかった。黒いパーカーを着ておりそのフードを被っているため、顔が影ではっきりと見えないのだ。前の席の背もたれに乗せている足は真新しいスニーカーを履いていた。なぜかその姿に既視感がある。 すると、急に前のスクリーンが明るくなった。何かが上映されるらしい。私は、まだ動くことが出来ない。きっと、このまま映し出される何かを見る羽目になるのだろう。
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