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目覚まし時計の音。締め切ったカーテン越しに射す太陽。薄暗い部屋の隅で、僕は仰向けで寝転がった状態で、目を覚ました。
涙が流れていたらしい。目尻が濡れているのを感じる。あまり動く気力はなく、しかし首だけを動かして、向かい側にある棚に置かれた優衣の写真を見た。
僕が最後に撮った彼女の写真であった。
「……今日の日記、つけてないや……」
言いながらも、ベッドから降りる気もなく――元より今日の日記をつける気はない――僕はもう一度目を閉じた。夢を見よう、辛い現実など見たくない、という想いで。
これが甘えであることは分かっている。醜い現実逃避であることも――いや、今更どう御託を並べても言い訳がましいだけだ。もう優衣はいない。
だけど、現実を直視する勇気が、僕にはないのだ。その証拠として、僕はあの日から日記を一切書いていない。
優衣は一ヶ月前に交通事故で亡くなった。
それはあまりにも唐突で、簡単には受け入れられない現実であった。
だから僕は、明晰夢を見ることで優衣との記憶を思い起こして、彼女の死から目を背けていた。
夢の中で優衣を思い描くのは簡単だった。彼女の姿形を強く思い浮かべれば、後は何も考えなくても動画のように再生され、文字通りあたかも彼女が生きているかのように夢を見させてくれた。
夢の中では、優衣はまだ生きていた。
「優衣……」
こんな僕の姿を見たら、優衣は何と言うだろう。
その答えを求めて、僕は再度、目を閉じた。
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