蛞蝓とゆき

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「ぎゃぁ!」  なめくじに少々の塩をかけるとそんな声があがった。私はなめくじにも声があったんだなぁ、とぼんやり驚いた。  足元のそいつはというと、自分の体をゆっくりうねうねとねじっていた。どうやら塩がかかったところが痛むらしい。 「おたすけを……。おたすけを……」  なにやらそんなようなことを言っている。  結構上手く話せるものだなぁと、と感心しつつ私は額の汗をぬぐった。今日は七月一日。梅雨明けはまだだが、晴れた暑い日だ。  それを思い出して私が青いお空を見上げていると、またもなめくじが喚いた。 「わたしは、いきていたい。それにわたしをころしても、あめがふればわたしのなかまがまたでてきますよ」  なるほど。私は大量の塩が入った容器を側に置き、ポケットからスマホを取り出した。蛞蝓についてネットで検索してみる。  確かにこいつ一匹今殺しても、またあとで同じものが出るなら意味はないか。熱で火照った脳みそで、私はくらくらと考えた。殺さなくても、ひょい、とつまんでどこかへ投げるだけでもいいかなぁ。こんな柔らかい体なら落ちても、怪我なんてないだろうし。 しかし、目の前でスワイプされる蛞蝓の情報は全てが全て、目の前のそいつを害虫だと言っていた。害虫は悪いものだよね。私はスマホをしまった。 やっぱり殺すことにするよ。悪い奴らしいし。 私はそう言うと、なめくじへ塩をぶちまけた。 「ぎゃぁ―――――――――」 そいつが黒く小さく縮こまって死んでいくのを見届けると、私は立ち上がって、またお空を見上げた。すると、何かがこちらに降りかかってきた。 それはまるでゆきのようで、しろくて、ざらざらして、しょっぱくて、ふれるとひりひりする……。 わたしのおくちはこえをあげるために、おおきくひらかれた。 「ぎゃぁ!」
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