陰の人、陽の人

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陰の人、陽の人

 最近、久しぶりに高校の同級生と遊ぶタイミングがあった。その人は本の虫である僕をもってしても本好きだと言わしめるほどの本好きで、久々にあった際も二人で最近読んだ面白かった作品はどうだっただの、これからこの作家がきそうだの、本談議に花を咲かしていた。そんな折、その人が言ったのだ。人に本を薦めるのって難しいよね。  なんでも、友人の一人がこの本凄い良かった、めっちゃ泣ける。と言って薦めてきた小説があったらしく、その作品を読んでみたところ自分はそこまで面白いと思えず、且つ、一ミリも泣けなかったそうだ。ちなみにその作品を僕も読んだことがあり、確かにそこまでよかったという印象を受けなかったし、泣けもしなかった。反対にその人が良かったと思った作品をその友人にオススメしたところ、その友人ははまらなかったらしいのだ。  ちょっと面白い話だと思った僕としてはその友人がどんな人なのかをその人に聞いていくことにした。聞けば、その人はとても明るい人で、単純な性格をしているとのこと。他にもいくつか教えてもらうなか、何より僕がびっくりしたのは、その友人は今までの人生で一度どして死にたいと思ったことがないということだった。でも、そのおかげで僕はなぜその人が薦めた本がはまらなかったのかわかった気がした。  きっと、その人は陽の人なんだよ。僕がそう言うとその人はきょとんとした顔をしていた。どういうこと? 僕は陰の人で、その人も陰の人。でもその友人は陽の人。僕らは考え方が似ているから感じ方も近いけれど、その友人は考え方がおそらく僕らとは真逆だから合わないんじゃないか。例えば、小説の主人公が何か死にたいような感情を持っているとして、僕らは似たような経験があるから感情移入できるかもしれないけど、そもそも人生が楽しくてそんなことを考えたこともない人が読んだって感情移入しにくくないか。  そんなようなことを説明すると、その人は確かにそうかもしれない。と納得してくれていた。実際のところどうなのかはわからないけど、でもやっぱり当たってる気がしている。  人に本をお勧めするときはその人の人となりや性格を知ってからその人に合いそうな本をお勧めしようと、裏で思う僕だった。
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