雨の日

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雨の日

 小さい頃は雨の日が大嫌いだった。理由は簡単で外で遊べなくなるから。今でこそ家で小説を書いたり、読んだり。音楽を聴いたり弾いたり、ゲームをしたりしている方が楽でいいと思えるけれど、その当時の僕は今とはまるで正反対だった。要するにアウトドアだったのだ。  それが変わったのがいつ頃だったのだろうか。よく覚えていない。きっと大人になるにつれ僕自身も知らないうちに考え方や、感じ方が変わっていったからだろう。  雨粒が地面とぶつかり合いはじける音。水たまりに落ちてそこを中心に波紋を広げていく様子。雨が上がり、濡れた草花が日に照らされ、反射する様。子供の頃には気付くことが出来なかったことに今は気付けている。子供から大人になると見えなくなってしまうものがある、なんて聞いたことがあるけど、逆に大人になって初めて見えてくるものもあるのだろう。  神奈川はもうすぐ梅雨入りする。これからもうしばらくは雨の音を聴く機会が増えることになりそうだ。とはいえ、そう続いて降ってこられてしまうと流石に飽きてくる。好きな音楽だってその曲だけを永遠とリピート再生で繰り返していたら、たまには違う曲を聴きたいと思ってしまうように。  できれば、二日置きごとにして欲しいな。どんよりと暗く重い雲に覆われた空に向かって願ってみるけれど、十中八九無理だろう。仕方ない。とりあえず、飽きがくるまではこの雨を僕なりに楽しんでみることにしよう。雨が止み、黒い雲が残る空。低空飛行する雀のさえずりがベランダの窓から聞こえている。
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