1 カーテンのすき間と月明かり

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1 カーテンのすき間と月明かり

「おはよう」  カーテンの隙間からゴミ捨て場に挨拶を投げる。抽出されたコーヒーをカップに注ぎ、パソコン前に腰掛けた。 画面をスクロールし目当てである人物、ナスビのブログURLをクリックする。  植物の背景に、微笑むウツボカズラがプロフィール写真に設定された画面にぱっと切り替わった。 NEWと表示された数字にマウスポインターをあわせ、またクリックする。 「昨日帰りが遅いと思ったら、やっぱりだ」  帰宅後にカーテンの隙間から細い車道一本を挟んだ窓明かりを確かめると、部屋は真っ暗で帰宅している様子はなかった。 息抜きで遊びに行く日もあれば、帰宅が遅い日もあるだろうと、三十分、十分、五分と間隔を短縮していくうちに睡魔に負けていた。椅子に座ってガラス窓にもたれたまま起床したが、アラームをセットしていなければ今朝は寝過ごしていた。 「友だちと久々の飲み会。眠い目を擦って三次会に出陣しましたが、危うくゴミ捨て時間に間に合わず、別の意味で目を擦る羽目になるところでした(汗)か。フフフ。普段よりも五分遅かったもんね」  ブログを読み終え、カーテンに隠れた向こう側に視線を移し、投げかけた。
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