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「私服とは別々に収納。意外と几帳面な方なんですね」
扉サイドにかけたネクタイを並びに触れていくと、ベルトも同様に触れていく。
取っ手を握りながらベルトをかけた扉を閉め、もう一方も同じく閉じた。
「スーツ類は高価なものばかり……」
パタンという音と共に、彼女に対しての極熱だった心の扉が閉ざされた。
「高価だったら、何だって言うんだよ」
なんだ。一体、なんだって言うんだ。
まさか!
「きっと」
不敵に微笑んだ。
「趣味も! 良いから、自然とクローゼットオに集まってしまったんですね~」
趣味の部分だけあからさまに強調され、俺は絶対に仕掛けに気づかれたと思い、血の気が引いていった。
「ただ。
田淵さんのお部屋はシンプルで、リビングはソファーとテレビ、寝室にはパソコンとベッドのみ。
二つあるクローゼットの一つは仕事用の衣類を収納していて、もう片方のクローゼットには、何が隠してあるんですかね」
再度、口角を上げ直すと、取っ手に手をかけた。
「私服、鞄、帽子。それとも……」
「いい加減にしろっ!」
怒鳴りつけると彼女は制止し、口元を手の平で覆った。
彼女の言う通り衣類や鞄、帽子など入っているが、それらは物的証拠と一緒に収納されていた。
決して、露呈するわけにいかなかった。
「田淵さんでも、怒るんですね。新発見できて、楽しいです」
掃除している際と同様に朗らかな微笑みを浮かべると、彼女は部屋を出た。
「……何、言ってんだ?」
口からついて出ると、後ろ手にくるりと振り返った。
「理解しないでください」
なんだ。
「人は無理に理解を示そうとしますが、理解不能なことを一々理解しようとしないでください」
なんなんだ。
「時間の無駄です」
彼女の正体は、地球外生命体なのか?
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