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「簡単だけど、どうぞ」
「いただきます」
トーストされた食パンにバターを薄くのばし、サーモンのマリネを挟んだ。
俺好みのコーヒーでパンの耳を流し、お湯で温めたポタージュをかき混ぜる。
「美味かったです。ごちそうさまでした」
「お粗末様でした」
腹が満たされ、ふと時間が気になった。
「と、時計どこですか?」
「そこの上よ」
指差された場所に視線を移すと、遅刻まで二十分弱に迫っていた。
「す、すみません。遅刻しそうなので、後日にお話伺います!」
「あっ!」
なにか言いたげではあったが、背中で声を拾ったため、聞こえないふりをして部屋に戻って出勤準備をした。
会社まで十分少々。
走れば間に合わないことはない。大事な仕事が入っていたため、遅刻は御法度。
仕事を落とさないために、俺は人並みをかき分け全力疾走した。
楽しみだったはずの仕掛けは、念頭から消失した。
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