わたしでいいんですか?

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 次の日、新入部員は半分に減っていた。でも、部長はまるでそれを最初から分かっていたように落ち着いていた。 「これで来なくなるってことは、元から向いてなかったんでしょうよ。無駄が省けてよかった」 「無駄って?」 「向いてない人に仕事を教え込む無駄よ。他にも、恋愛が目当てでここにいる人はさっさと出ていってちょうだい。甘い考えのままでは勝てるものも勝てないわ」  笑顔のままキッパリと言い切った部長に、わたしたちは誰も何も言い返せなかった。  コンクールに向けての作品作りについて話し合いが始まった。七月の末頃には放送コンクールが、そして八月中には文芸コンクールの参加締め切りがやってくる。  わたしたちはコンクールに出す部誌に掲載する作品のアイデア出しや執筆、自由参加の個人部門へ向けての作品をとにかくたくさん書くことになった。部活内では互いに読みあったり討論しあったりは普通で、ペアの二人はまずその前に互いの作品を読み合って、全員の前で発表できるだけの完成度を持っているのかを話し合うのだ。 「こういうのは、褒めるだけではいけない。もちろん、貶すだけでもいけない。俺は期待してる。君の、感性に……」  菊池先輩はそう言って、背後からわたしの肩に手を置いた。 「頑張って、月坂」 「は、はい、菊池先輩!」  その時、舞い上がってしまっていたわたしは気づかなかった。同じ新入生の女の子たちの視線の冷たさに。だから、あんなことになってしまったんだと思う。  菊池先輩の期待に応えたくて、わたしは一生懸命に放送コンクールのためのドラマ脚本作りに夢中になっていった。クラスメートや友達との付き合いもそこそこに、授業中も家にいるときも、ぜんぶ上の空。放課後は菊池先輩たちとアイデアを出しあったり、脚本について勉強したり。それが楽しくて仕方がなかった。  先輩はわたしのために、家から自分の本を持ってきて貸してくれた。 「汚くてごめん。でも、きっとためになるよ」 「ありがとうございます! わたし、頑張ります!」  先輩が貸してくれた脚本作りのための本は、確かによれよれで付箋紙と傍線、書き込みだらけだった。でも、汚いなんてとんでもない! 何度も読み返された、大切な本をわたしのために貸してくれるなんて……嬉しくて嬉しくて、涙が出そうになった。
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