わたしでいいんですか?

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 わたしが考えたドラマ脚本は恋愛ものだった。主人公は高校生の女の子で、相手は学校の先生にした。二人は受験をきっかけに急速に近づいていって、でも、主人公の女の子は告白するのを躊躇っている。  最初は相手役を先生にするつもりはなかったんだけど、でも、先輩と後輩なんてとてもじゃないけど書けないもの。まるで、まるでわたしと菊池先輩のことみたいで……恥ずかしくて。 「テーマはいいわね。恋愛ものはわかりやすいし、学校が舞台だから身近だわ。でも……」 「先生との恋愛ってどうなの? 怒られない?」 「そこが逆に挑戦的でいいと思うけどなぁ」 「実際、十八歳未満の女の子と成人している先生との恋愛ってどうなの? 認められるの?」  あらすじを読んだ先輩たちは、青少年保護育成条例とか、児童福祉法とか、難しいことで議論を始めてしまった。やっぱり、この案はダメなんだろうか……。  しょんぼりしていると、菊池先輩がパンパンと手を叩いた。 「はい、そこまで。俺は良いと思うよ。テーマがテーマだけに放送部の確認も取らなくちゃいけないけど、まずは書き上げてもらおうよ。ドラマがダメでも小説としてどこかに出すことになるかもしれないんだし」 「そうね……。このままお蔵入りは惜しいわ」 「主眼をどこに置くかを議論したり、ドラマに仕立て直すのは後でもできる。まずは、良いテーマを持ってきた月坂に、作品を完成させてもらおう。月坂も、それでいい?」 「は、はいっ! もちろんです!」  わたしの返事に、菊池先輩は笑って頷いてくれた。わたしは今まで以上に真剣に文章を書くようになった。書いては消し、書いては消し……。  部室でああでもない、こうでもないとノートに向かっていると、首筋にヒヤッとしたものが当たった。 「ひやっ!?」 「お疲れ。根詰めすぎるなよ?」 「菊池先輩!」 「できれば書いた文章はダメなのも消さずに置いといて。後から見直すと変えたくなるかもしれないから。あと、実際に声に出した方がスムーズにいくから、手伝えるようになったら声かけろよ」 「えっ、先輩が読んでくれるんですか!?」 「うん。俺と、月坂で。主人公と先生の台詞を読み合わせてみよう」  先輩はわたしに林檎ジュースの紙パックを押しつけると、手を振って行ってしまった。わたしはお礼を言ってその背中が消えるまでじっと見送っていた。
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