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放送部のドラマ担当の人がわたしの脚本を気に入ってくれて、本格的にドラマのために文章やセリフを考えていくことになった。これはきっと菊池先輩のおかげ。だって、先輩がわたしの持ってきたアイデアに賛成してくれて、続きを書いておいでと言ってくれなかったら、わたしは部長たちの言葉にしょんぼりして書くのを諦めてしまっていたもの。
最初に考えていた甘いだけのラブストーリーとは違って、ちゃんと現実の法令や大人の意見を取り込んで練られた脚本はまさに青春ドラマといった仕上がりになっていた。これはもうわたしだけの作品じゃなく、菊池先輩と、文芸部のみんなとで作り上げたものだ。それがとても嬉しくて、誇らしかった。
放課後の部室で、そうじゃないときは空き教室や、別棟との繋ぎの誰も来ないような場所で。わたしと先輩は二人でああでもない、こうでもないって脚本について話し合った。そして実際に演じてみた。
最初は照れくさかったけど、先輩の熱のこもった演技がわたしを物語の世界に引きずり込んでいった。そう、書いていた間ずっと、待ち望んでいたことが、現実になったの!
先輩の声で、ヒロインの相手役の先生が、まるで実在の人物みたいに息づいていく。わたしも負けじと声を張り上げて、わたしのものじゃない言葉で先輩への愛を叫んだ。
「好きです! わたし、どうしても……諦められないんです! 好きなんです、せ……!」
先生、と続くべきところで、思わず先輩の名前を言いそうになって慌てて咳で誤魔化した。
「……惜しかったな」
「え?」
「今の演技、これまでで一番良かった。言葉の繋ぎも呼吸も、完璧だった。これならきっと、最高のラジオドラマになる……」
「……はい」
菊池先輩の目が、わたしだけを映している。いつもより少し低い真剣な声に、わたしはそれ以上何も言えなかった。心臓がドクドクと脈打って熱い。ほっぺを撫でる風が冷たくて気持ちが良かった。
いっそ、今すぐ言ってしまえば良かった。好きですって、言ってしまえば良かったのに。
告白するなら晴れた日にしよう。放送コンテストのために書き上げたこの脚本を、ちゃんと形にしてもらって、そうしたら……。
わたし、先輩に告白しよう。わたしの気持ちを、知ってもらいたいから。
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