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十二章
ある快晴の日、私と夏基は、いつもの画材屋さんと併設の本屋に来ていた。
私は昔由奈が持ってなくて読めなかった漫画と、冬川先生の漫画を1巻から最新巻まで全てカゴに入れる。巻数が多くて重いので、夏基にカゴを持ってもらっている。
「電子書籍で買ったんだろ? 最新巻だけ買えば?」
「いや。紙で見たいの」
紙の本でその息遣いを肌で感じてこそ、ファンだ。異論は認めるが。
「冬川先生喜ぶな」
夏基が朗らかに笑う。
「私が買った売上で左右されるような人じゃないでしょう?」
「重みがちがうよ」
確かに私は、今まで冬川先生の漫画を大っぴらに楽しめる立場ではなかった。本屋でこんなに堂々とそれを手に取る日が来るとは、夢にも思わなかった。
「……そうね」
私は辰巳の腕を引っ張ってレジに並んだ。
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