一章

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お母さんが一生懸命部屋に掃除機をかけている。いつもはボーナスで買ったお掃除ロボットで済ませているのに、どうやら彼の仕事ぶりでは不安があるらしい。 「ちょっと、今からお茶なんか飲まないでよ」 私が一分(いちぶ)の隙もなく綺麗に陳列している食器棚からコップを取り出すと、お母さんが目ざとく見つけて小言を言う。 「ちゃんと自分で片付けるってば」 私は冷蔵庫からペットボトルを取り出し、アイスコーヒーを注いで口を付ける。お茶にしなかったのはささやかな反抗だ。 中のコーヒーがコップの半分に差し掛かった頃、インターホンの音がする。 「うわ……」 私の呻き声を聞き付けた母がキッと私を睨みつけた。後で説教コース決定。
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