十二章

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「そうだ、これ」 夏基が私にクリアファイルに入った紙を渡す。私の顔が輝いた。 「冬川先生が描いてくれたイラスト? いいの?!」 「いいも何も、元々お前に描いてくれたんだよ」 私はイラストを上から下までじっくり眺める。スマホの画像じゃわからない、細かい描き込みまで見ることができる。 どこに飾ろう? 額縁も買ってくればよかった。 「ニヤニヤしながら見やがって」 夏基が少し拗ねたような声を出す。 「だって、本物を触れる距離で見れるなんて」 私が言い返すとむくれた顔の夏基がパッと私の手を取りぐいっと自分の方に引き寄せた。
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