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隈笹の生い茂る獣道から抜け出て、竹の束を肩に、暖かい木漏れ日の降り注ぐ斜面を下る。
径に出ると、言い争う声が聞こえてきた。
十間ほど先、三叉路の道祖神の前に、その主たちの姿があった。
「理屈は良い」
頭ひとつ抜け出している童が答えた。
三郎が言っていた力自慢の喜八郎だろう。
その隣の三郎より小柄な童が、足が速いという九郎か。
「おまえのためを思うて言うておるのじゃ。このままというなら、袂を分かつことになろう」
三郎が反論する。
「相手が何者であろうとも、その力量を認め、受け入れる度量も必要ではないか。武門に生まれたのであればなおさらじゃ。」
「人であれば、つき合いもできよう。やつは鬼の子じゃ。あの暗い目を見ればわかろう。なにをしでかすかわからぬぞ」
「イダテンがなにをしたというのだ。人に害をなしたことは一度もないではないか。むしろ、腕も立てば知恵もある。つきおうて見ればすぐにわかろう」
喜八郎と九郎は目くばせをして答えた。
「どうしても、おまえが、鬼の子と組むというなら、われらとの縁もこれまでじゃ」
「奉納祭の競弓の仲間は、ほかを当たるが良い」
そう言い捨てて山道を下って行った。
三郎は二人を追うでもなく、その場に立ちつくしている。
イダテンの足元を影が横切った。
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