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矢を入れた筒袋の横にある物入れから小さなノミを取り出した。
研ぎはしっかりとかけられている。
「何でも入っておるな」
という、三郎の言葉を聞きながら、眠っているミコの頭に手を回した。
身内のおばばを別にすれば人と触れ合うことなど一度もなかった。
ましてや抱き上げることがあろうとは想像すらできなかった。
そっと横の草地に降ろして取り掛かった。
「なんじゃ、これは? なにかの見立か?」
出来上がったものを見て、三郎が我慢できずに聞いてきた。
「丸太と軸になる丈夫な木は手に入るか? できれば樫がよい。丸太は切れ端でかまわぬ」
三郎は目を輝かせた。
「これの大きなものを作るのじゃな。どれぐらいの大きさじゃ」
一尺は欲しいと、両手で大きさを示す。
三郎は、
「わかった。道具も借りてきてやる」
と、口にして走り出したが、すぐに戻ってきた。
何かと思えば、真剣な眼差しで、
「今度は、わしにも手伝わせるのじゃぞ。よいな」
と、念押しした。
イダテンがうなずくと、満面の笑みを浮かべて、
「わしに任せろ」
と、飛び出していった。
すやすやと眠るミコを残して。
ミコの顔にかかるほつれ毛を直し、自分の首に巻いていた麻布を広げて胸元に掛けてやる。
今日は暖かいが、今年の冬は寒いという。
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