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第二十七話 武士たるもの
「このようにしてはどうでしょう」
邸に戻ると姫が提案した。
「隆家様の元におられる工藤様は、かつて木工助という役職を得たおりに名字を変えられたと聞いています。工藤様に口添えいただければ、名のある工匠のもとで修行できるのではありませんか」
「駄目でしょうな」
忠信の即答に姫が驚きの表情を見せる。
「皆があれほど驚くものが作れてもですか?」
「その才能を目の当たりにした宮大工でさえ、鬼の弟子など持てぬ、と答えるのですから」
世情にうとい姫といえど、忠信の言っていることは理解できたようだ。
それでも、「まあ」と、言いながら姫は眉を寄せ、唇を尖らせた。
ミコの真似だ。
たしなめはしたが、これも、忠信が放任してきた結果である。
「では、こうしましょう」
面白いいたずらでも思いついたように姫が目じりを下げ、扇で口元を隠した。
それを見た忠信は、次の言葉を待たずに、「いけません」と答えた。
*
ぱちん、ぱちんと音がする。
左手に握った扇が音を立てていた。
無意識のうちに開閉していたようだ。
大人気ないと言われても仕方がない。
おそらく苦虫を噛み潰したかのような表情になっているだろう。
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