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だが、主人の変心の理由は、ほかにあった。
「新たに荘園献上の申し出があった。国親が官位を得られるよう働きかけてやらねばなるまい」
その言葉に戦慄した。
やつに官位など与えれば、その地盤はいよいよ盤石なものになってしまう。
もはや諫言など伝わらぬことが分かった。
*
目の前で老臣が頭を下げている。
だが、老臣が謝罪することではあるまい。
少し考えればわかることだ。
貴族のなかでも殿上人と呼ばれる公家の高貴な姫君が、臣下に手習いを教えるなど、あり得ないということが。
鬼の子であればなおさらである。
自分が、少々、舞いあがっていたのだ。
ここにいれば、思う存分、建築のことが学べるのではないかと。
老臣は、あらためて住む場所を用意すると言っているが、そのような施しを受けるつもりはない。
早々にここを出よう。
胸や手足に痛みは残るが、木の実を集める程度のことはできる――にもかかわらず、まだ、野山を駆け回って狩ができるほどではない。あと十日ばかり、ゆっくりできればと考えてしまう自分がいる。
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