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今年は寒い、と皆が口を揃えるが、イダテンにしてみれば、ここは春の陽だまりのように暖かい――だからこそ、これ以上、長居をしてはならないのだ。
三郎が、「わしのことは三郎と呼べ」という。
だが、名前を呼び合って何になろう。
ましてや、姫や老臣と親しくなって何になろう。
今、手掛けているものが出来上がったら、それを土産にここを離れよう。
イダテンが描いた図面を三郎が鍛冶師に持ち込んで三日が経つ。
あと、二、三日もあれば届くであろう。
月も霜月へと変わる。
イダテンは陽のあたる庭を見つめた。
華やかに色づいた紅葉や楓が錦繍の賑わいを見せる。
次の住処は庭にも工夫を凝らそう。
それほど手間をかける必要はない。
周りの自然を取り込んだ借景としよう。
「――三日後に」と、答えた。
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