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だが、このあたりのすすきは大人の背より高い。
葉や茎に当てねば出所はわかるまい。
風で揺れていることは気になったが、覚悟を決め、痛む腕を叱咤して、弦を引き絞った。
矢は、すすきの穂と葉の間を縫って馬の胸に吸い込まれた。
馬とともに前倒しになるところに二の矢を放った。
矢は首を貫き、鎧武者は何ひとつできぬまま地面に叩きつけられた。
射る音も、馬がすすきをかき分ける音でかき消されたはずだ。
苦しげな馬のいばえもすぐに途絶え、再び静寂が訪れた。
姫は相変わらず目を覚ましていない。
目前の死地からは脱したものの、考えもなく飛び出せば、先ほどの男たちと同じ運命が待っているだろう。
かといって、じっとしていれば包囲を狭められる。
加えて押し寄せる冷気が体力を削る。
弓を背負子に括り付け、かじかむ手に息を吹きかけ手斧を握った。
――と、その冷気を切り裂くように指笛の音が響き渡った。
それは、興奮を隠そうともせず、すすきをかき分け、吠えながら近づいてきた。
犬が放たれたのだ。
山犬が襲ってきたと思ったのだろう。
馬が怯えて腰を引いた。
すすきの間から二匹の犬が姿を見せた。
狩りに使われているらしく、慣れた様子が見て取れる。
藪から追い出そうというのだ。
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