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阿岐権守同様、邸で謹慎してきた馬木の隆家に軍勢を繰り出す口実を与えることになるからだ。
隆家にしても、ささらが姫が生きていればこそ、
「謀反を起こしたのは海田の宗我部国親である。叔父である馬木の隆家が後見に立ち、凶党、宗我部を鎮圧するために兵を挙げる」
と、いう名目が立つ。
左大臣と言えど、隆家側の言い分を聞かざるを得まい。
様子見をしていた近隣の土豪も味方につくだろう。
宗我部側から離反する者も出るだろう。
だが、たとえ姫を擁しても、隆家が討たれれば宗我部の言い分が通るだろう。
どちらが正しいかではない。
勝った者が正しいのだ。
理由など、あとからつければよい。
戦とは、歴史とはそうしたものだ。
勝てば都に返り咲くきっかけとなろう。
あるいは勝ってのち都に帰ることをあきらめ、この地に定住すれば、宗我部にとって代わり、この地の棟梁となることもできよう。
いずれにせよ、姫は、隆家にとっての飾りとなる。
だが、姫を救う道はそれしか残っていない。
イダテン一人なら、馬よりも早く走ることができる。
姫を背負っても負けはせぬだろう。
だが、足首も万全ではない。
体力も落ちていた。
馬が入って来れない径や、獣道などを選んで走ったことで負担も増した。
足が重くなり、息も乱れてきた。
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