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風切り音は蹄の音でかき消されているだろう。
手の内を滑らせながら、さらに大きく振り回した。
縄と手斧は絵に描いたように見事に巻きつき、男は背中から落ちた。
体に当たったのは斧頭側だ。
致命傷にはなっていないだろう。
馬は、しばらく走ってから、様子を窺うように立ち止まった。
イダテンは、慎重に後ろから回り込んだ。
男の腰に吊るされた太刀を引き抜き、膝を背にあて、喉に腕を巻きつける。
「騒ぐな。国親は今、どこにいる?……正直に言わぬと、喉をかききるぞ」
が、それは武士ではなかった。
忘れるはずもない。イダテンから勾玉を奪おうとした三白眼の男だ。
男は自分を捕えたのがイダテンだということに驚きながらも、痛みと息苦しさが和らぐと、ぺらぺらと喋り始めた。
「まて、まて、わしは敵ではない。お前も知っておろうが、阿岐権守様の邸で働いておる吉次じゃ。見よ、これ、このとおり鎧甲冑を身に着けておらぬではないか……少しでも遠くへ逃げたいと馬に乗ったまでだ」
次々と言い訳を並べたてる。
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