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第一話 鬼の子
川屋(厠)から帰ってきて、わが目を疑った。
どこから湧いて出たのだというほどの童どもが、武器庫の前に群がり、中にある物を根こそぎ持ち出そうとしていた。
荷車を持ち込んで盾を積み込む者までいる始末だ。
鍵はかかっていたはずだ。
こんなことで責任を問われたのではたまらない。
「やめろ! 何をしている。糞餓鬼どもが!」
怒鳴りちらし、力ずくで手前の二、三人を引きずり倒したが、童どもは怯むどころかにらみつけてくる。
それどころか、たたみかけるような口上で、次々と責めたててきた。
「兵(つわもの)どもは、なにをぐずぐずしておるのじゃ。宗我部国親が攻めて来るぞ!」
「赤目じゃ、赤目の国親が攻め入るぞ。髭の兼親が先陣を切るぞ。弓を取れ! 矛を持て!」
勢いに押され、差し出された矛を思わず受け取ってしまい、舌打ちする。
「馬鹿を言うな。ここをどこだと思っておるのだ。われらが主は、代々、帝を支え続けてきた摂関家の嫡流ぞ。いかに横紙破りの国親と言えど……」
――最後まで告げることができなかった。
どん、と下腹に響く太鼓の音が、法螺貝の音が。
そして大地を揺るがす鬨の声が上がった。
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