第十三話  人ではないモノ

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今のやり取りで、老臣や姫が、おばばと自分の置かれてきた境遇を掴んでいたことがわかった。 知りながら何もしてくれなかったことも。 しかし、先ほどと違って怒りは湧いてこなかった。 そもそも、世間知らずの姫や公家侍になにができよう。 姫が、イダテンの顔をひたと見つめてきた。 肩に力が入っているのがわかる。袖の下の両手を強く握りしめているのだ。 「――ですが、わたしはあなたのことを信じます。皆が驚く力を持ちながら、その力を一度たりとも奮わなかったあなたは誰よりも……」  イダテンは、邪険にその言葉を遮った。 「おばばが生きておったからな」 ささらが姫の表情がこわばり、イダテンを見つめるその目から涙が一筋こぼれ落ちた。 姫は察したのだ。 怒りにまかせて力を奮えば、人間たちの矛先は弱者であるおばばに向かったであろうことに。 なにをされても耐えるほかなかったであろうことに。 人とは泣くようにできておるのだろう。 おばばもよく泣いた。 おれは人ではないから泣けぬのであろう。 声もあげず、ぽろぽろと涙をこぼす姫を見ながらそう思った。     *
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