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「おお、独楽(こま)で遊んでおる」
三郎が、よしよし、と満足そうに続ける。
「イダテン、おまえ、独楽は得意か?」
遠くから眺めたことがあるだけだ。
小さく首を振る。
三郎の声に数人が振り返った。
「赤鬼じゃ!」
と、いう声が上がり、五人が悲鳴を上げて逃げ出した。
ガキ大将らしい童が、自分と同じぐらいの年の者に指示して、泣くばかりで動けなくなった童を連れて行かせると、残ったのは二人だけになった。
背が高く体格の良い童と小さいがすばしこそうな童だ。
「おお、思った以上の反応じゃのう」
三郎は反応を楽しむように二人に近づいた。
三郎が話しをはじめると、誰かがイダテンの袖を引いた。
見ると、ミコが前に出てイダテンを見上げ、
「ねえ、イダテン、あとでミコと、ひなあそびしよう」
と、笑顔を見せた。
残った二人も三郎との話を切り上げ、去っていった。
袖を引くミコの速度に合わせ、広場の中ほどにぽつんと一人たたずむ三郎に近づく。
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