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第十九話 友というもの
土を手に取り、しみじみと見つめる。
おばばと共に耕した山間の岩の転がる荒地とは比較にならぬほど地味が肥えている。
イダテンは鍬を振るい、土を掘り起こし、山の斜面を削り、新しい畑を作った。
食い扶持は返さねばならない。
この山を三郎たちが開墾して使うのは構わないらしい。
昨日は、斧を振るい、木を切り倒し、丸太を尖らせた棒を使い、根を引き抜き、石をさらった。
寒さに震える時期だと言うのに額から汗が流れ落ちる。
左手で汗をぬぐい、下の畑を見下ろした。
三郎とミコは大豆の収穫に励んでいる。
昨日は、隣の畑の里芋を掘り出していた。
大豆の前には麦を植えていたと言う。
ヨシに雑穀や菜の作り方を教わっておけば、移り住んだのちも役に立つだろう。
*
大豆の収穫は難しくない。
さやの中で豆が音を立てるようになれば、簡単に茎が折れるようになる。
幼いミコでも簡単に収穫出来る。
三郎は、収穫が、ひと段落ついたところでミコの手を引き、斜面を登った。
そこには、イダテンがたった一人で作りだした新しい畑があった。
三畝ほどはあろう。
たいそうな広さだ。
一昨日までは山の斜面だったのだ。
心底感心した。
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