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第二十話 異形のモノ
晴れ渡った空を仰ぐ。
飛天が翼を広げ、大きく弧を描いていた。
鍬をかつぎ、東の方向の御山荘山の稜線と南側に位置する島々を眺めながら径を下りる。
耳を澄ますとヒヨドリのさえずりが聞こえてきた。
三郎の背負い籠の中の大豆のさやが、歩を進めるたびにからからと音を立てる。
ミコが径を外れ、とげのあるオナモミの実を見つけ、ひっつきむしと言いながら、三郎とイダテンに投げつける。
収穫を手伝えただけでなく、自分が沢に竹を差しこんだことで畑に水が流れ込んだ興奮もあるのだろう。
嬉々として動きまわっている。
「兄上、みて! アキグミだよ」
繁みの奥から枝ごと折り取った赤い実を、かかげて見せるミコに目もやらず、
「おお、熟しておれば随分と甘かろう」
と、返した。
ミコが枝からたれた実を上にして口を開けた、
「よせ! それはアキグミではない」
イダテンは思わず叫んだ。
ミコは驚き、その実を落とした。
息を切らせて駆け寄った三郎が足元に落ちた枝を拾い、顔色を変えイダテンを振り返った。
「ヒヨドリジョウゴじゃ。吐き気や、腹痛ですめば良い。へたをすれば命を落とす」
イダテンの言葉に、ミコは、眉根を寄せて三郎に抱きついた。
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