ご隠居愛人

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「そうですね。じゃああなたは中途半端じゃないんですね、そんなに大口叩くなら」 「なんですって?」 舘野浩一郎に囲われて5年目になる。初めて会ったのは接待の席だった。 当時不倫関係にあった上司に連れられて出向いた料亭。取引先の杯に酒を注ぐのは若い京香の役割だった。 妻と離婚するといってなかなか別れない上司に愛想を尽かし、浩一郎に見初められた京香はすぐ彼の愛人になった。 東京の一等地に狭いながらもワンルームをあてがわれ、毎週やってくる浩一郎の相手をした。生活費もフツーのOLがもらえる給料の倍はもらえた。 ブランド物の服も宝石もフツーのOLが欲しがる程度のものは買えた。 食事も倹約などしなくても三食満足に食べられた。 あれから5年。 浩一郎から、そろそろゆっくりしよう、と言われた。浩一郎も60歳、引退して田舎に引っ込むのかと思った。栃木に建設中のマンションがある、そこで暮らさないか、と。 しかし、このド田舎に引っ越してきたのは京香だけだった。 新規事業を立ち上げるので東京を離れられなくなったというのだ。 浩一郎が京香の部屋に来る回数は激減した。 月に一度、ゴルフをするときに前の晩に一泊するだけ。     
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