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二
復帰できないほどではなかったが、ダメージはものすごく、スターを雄修しかもたない高津川部屋は、急遽俺の存在を欲した。
親はまだ世話になってない関産大の入学確約より、既に世話になっている高津川部屋への義理立てを優先した。
大学生活は夢と潰え、俺は高卒の、相撲初心者に逆戻ってしまったのだった。
そう。
高校で相撲をやらなかっため、俺は経験者としての優位性までも失っていた。
小中の頃の二位の束。
優勝のふた文字のなさが完全に響いてしまっている。
自分より経験の浅い奴らを兄弟子として仰ぐ屈辱。
そしてなまじ強い分と、バスケットボールがとくいな分、風当たりはミョーに強かった。
相撲人のくせにバスケできんのかよ! みたいな感じだ。
意外性はマスコミのもっとも食いつくとこだし、兄も兄なので人より取材は自然多くなる。
兄弟子たちのそねみを受け、必然的に可愛がりにも力がこもる。
おかげで毎日傷だらけ。
自分でも思い出している。
この汗臭い、暑苦しい稽古と人間関係が厭で俺は…
でも何が幸いするかわからない。
先輩方の可愛がりは、結果的に俺を強くし、兄ほどではないものの、トントン拍子の出世ぶり。
たった七場所数えただけで、俺は幕下優勝した。
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