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五
この負けからズルズル負けが込んだ。
かろうじて勝ち越しにはなったものの、前頭への返り咲きは、二場所待たねばならなかった。
勝った秋津の方が悲惨で、翌日から休場し、二度と土俵には戻らなかった。
廃業の翌朝バスケのボール持って、うちの部屋に来た。
河川敷行こうや。
高校時代の目で俺を誘う。
俺は頷き、おかみさんに挨拶してちょっと出てくると伝えた。
誰でも使える河川敷のゴールに、スリーポイントを決め続ける。
漫画とかなら当たりあって、旧交を温めあうとこだが、互いに百キロを超す巨体だ。
もみ合うだけで大事になる。
さすが必中のスリーポインター。
一球たりとも外さない。
腕が痛くなってきて、一球、二球と外れが増えていき、ついに俺はギブした。
「わかったわかったわかった。俺の負けだ。完敗!」
「ザマーミロ!」
最後の一投がずさっとネットを揺らすと、秋津は高校生の頃と同じ笑顔で笑った。
「一生覚えとけよ。バスケも相撲も俺のが上だったんだ!」
「はいはい」
「はいはいじゃない。このクソッタレ! おまえが裏切らなきゃな、俺はいまでもバスケを…おまえと…」
声がくぐもる。
俺は黙ってる。
俺といっても駄目だったかもしれない。
そんなこと本人がいちばんわかってる。
わかっててなおここまでしないと納得できなかったんだよな。
「どうすんやこれから」
「関空行くわ。イギリスに医者一人キープしてんねん」
「治るんか」
「まさか。でも日常痛ないようにはしてもらえるらしい」
そんなにも…
「腕良かったら紹介したるわ」
俺に背を向け歩き出す。
今友が飛び去る。
しがらみを断ち切って。
潔いと、思った。
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