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 さらに二年過ぎた。  大学を卒業した理奈は『JINK』をいったん辞めていたが、近くの会社で事務をしてるとのことで、今は客として来店してよくいる。  木曜と金曜によく現われるので俺も木金狙いで行く。  新しいバイトは気が利かず、気づくと理奈が立ち働いてる。  そんなところも愛らしかった。  愛だ恋だは残念ながら、平幕のうちはムリというもの。  早く出世してプロポーズだ! みたいな、俺は自分の人生で初めて、人参めいたものを自分に掲げたのだった。  両国の場所は荒れた。  東の横綱に早々に土がつき、千秋楽は俺を含む三人が優勝を争っていた。  勝っても優勝目のない一人加えて、二人二人、直接対決となり、俺はあの、 大関、盛光(さかりひかり)との対戦となっていた。  兄、雄修を潰し、俺と秋津から間接的にバスケの夢を奪った仇だ。  これまで不思議と当たることがなかったのは、示しあわせでもしたように、どちらかが、必ず休場になっていたからだった。  呼び出しがかかり、互いに土俵に立つ。  古傷だらけの巨漢は、蹲踞してさえ小山のようだ。  八卦ヨォイ!  残った!!  小山が俊敏に動いて、ぶちかましにくるところを、かわしてはたきおとしにかかったが、一瞬の隙をつかれてまわしをとられた。  万事休すか!?  その時。  この世の誰よりも至近距誰で、敵がこうつぶやくのが聞こえたのだ。  兄弟揃ってざまあないな。  かっとなった。  まきかえした。  そのままつり出して、もののように俵の外においた。  静寂。  軍配。  押し包む静寂。  次の瞬間、国技館は、怒号ともつかない歓声の嵐に包まれた。  東京辺のタニマチ袖に、賜杯手に、喜び勇んで『JINK』に駆け込むと、兄、修司~いや雄修~が理奈さんと、一番静かなボックスで、仲良くお茶していた。
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