猫世界、猫刻、猫日和

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猫世界、猫刻、猫日和

 視線の端で白い影が動いた。 「あ、パール」  寝る前にゲージに入れていたはずの猫のパールが、部屋を散策していた。 「パール、勝手に出ちゃダメでしょ」  まおはパールをゲージに戻そうとするが、パールはからかうように逃げ回り、壁に立て掛けられたままのフラフープを倒した。  まおはそれを立て直そうとして、タンスの角に指先を当ててしまった。 「……っ」   パールがフラフープの輪の中に入り、嘲笑うかように、ちょこんと座った。 「もう、あなたったら……」  SNSで猫転送が話題になった時、パールも……と真似をしたのだけど、全然輪の中に入らなかったのに、何故今それをするの。 「パール、おいかけっこはおしまいよ」  まおは心の中でパールに言いながら、パールを捕まえようと一歩踏み出したその時、フラフープが輝き、パールの姿が消え失せた。 「え?」  まおは、さっきまでパールがいた、輝くフラフープの輪に足を踏み入れた。まおがあるはずの床の感覚がないと感じた瞬間、不思議の国のアリスのように、まおは落ちた。     
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