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和らいだ朝日がガラス越しに入る,静かなリビングルーム。
奏の夫が目覚めた気配が、2階の寝室の床上から感じらせた。
子供たちのカッタン、コットンと,階段の小さな足音が聞こえて来るには、まだまだ時間には早い。
「あぁ~今日は眠る事が出来た!」
そんな言葉さえも忘れて過ごしている,この4年間。
恋愛も・・・
ましてや、結婚して家庭持つ事なんて 奏の青春時代から、そんな選択肢は無かった。
戸惑いながら、それでも希望に溢れた
自分だけの自由空間を過ごしていた大学
生活は、部屋に合わせたいとお気に入りの
淡い模様のカ-テンが窓際の僅かな隙間から風に靡く事さえも、魅入ってしまった春の夕暮れ。
しかし・・・
部屋の電気もつけず、
街の灯りだけでよかった日々も、それさえも段々耐える事が出来なくなった。
目を閉じて・・・
聞こえてくる音に手で覆い・・・
口も閉ざし言葉を忘れ・・・
心の回路は暗闇のトンネルを探し始めた。
手探りしながら歩こうと思っていても、手にさえも何も触れることが出来ない
幾つもの時を重ねていた。
巡り廻る季節の空色・・
風が運んでくる花々の薫り・・・
いつでも・・・
何処でも・・・
そこには母が居てくれた。
「奏ちゃん・・・人と違った風景が見えても、貴女しか見えない風景が其処にあったらそれを大切にして行こうね!」
「今のあなたで良いよ!」
「生きてくれてさえいたら、それでいい」
母の声が聞こえてくる様で・・・
今日もこの朝から一日が始まる。
「おはよう!奏。」笑顔の夫の声が・・・
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