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ごくごく。喉に水が沁みるように。
極々、私的な思いが巡っていく。
いとしき空間よ。私の中の遠い記憶。
同じ地点なのに、もう存在しない透明な箱。
もう一人だけ、わかる人がこの世にいる。
君は此処を通りかかったら、思い出したりするのだろうか。
この景色を見ながら、よく電話をかけたね。
私はいつだって、胸を躍らせてエレベーターを降りる。
何度繰り返しても
どうして君に会うのに、こんなにもどきどきするんだろう。
待ち合わせたロイホが、今も確かに消えずにあって。
外を眺めて静かに待つ君を、硝子越しに見つける。ことはもうない。
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