第2章 対決

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 当社からは、僕の他、山口部長、角田先輩、そして吉村弁護士が対応した。我々は、末永に対する敵意に漲っていた。特に当事者の山口部長の目は血走っておりその怒りは尋常ではなかった。  そんな我々をよそに末永は、「いやー、このたびは山口部長様始め皆様には大変なご迷惑をお掛け致しましたこと、誠に申し訳なく思っております」と落ち込んでいる様子は微塵もなく調子のいい口調で深々と頭を下げた。 「末永さん、あんた、とんでもないことをしでかしておいて、残金の8000万円まで踏み倒そうなんてどういう了見だね!申し訳ないじゃ済まないよ!この始末、どうつけるつもりだね!」捲し立てる山口部長を宥めるかのように、「お怒りはごもっともです。依頼人の末永も深く反省しており、8000万円の返済は命に代えてでも行うと申しております。ここはお怒りを鎮めて頂き、冷静に今後の返済について話し合いましょう」西崎弁護士が割って入った。吉村弁護士も「山口さん、末永さんも命に代えて返済すると言っているのですから、ここは8000万円の返済について話をしませんか」と山口部長を諭した。 「・・・分かりました。末永さん、残金の8000万円は間違いなく返済してもらえるのでしょうね」山口部長は末永を睨みつけながらも込み上げてくる怒りを押し殺すかのように返済の話に切り替えた。 「それはもう、何に代えても8000万円の返済は致します。私の思料が足りないばかりに山口部長様のご厚意を結果的に裏切ってしまったことは、大変心苦しく思っておりました。せめて残金返済くらいは命に代えてでも致します」末永と言う男、口は相当達者なようだ。山口部長はすっかり末永の言っていることを信用している様子であった。 「吉村先生、末永さんの返済について詳細を決めませんか」僕は今更、末永の言い訳を聞いても埒が明かないと思い8000万円の返済を早急に決めるべきだと思った。 「そうですね。では、末永さん、8000万円の返済はどのようになさいますか?」吉村弁護士が平和的和解の伝道師のような口調で穏やかに尋ねた。
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